何でこういつもタイミングが悪いのだろう。
目の前に君がいたのが当たり前だった頃はケンカばかりしてた。
ほんの些細なことで、すぐ腹を立ててしまっていた。
しばらく時間がたつとまたいつもの二人に戻ってた。
でも僕からはほとんど謝ったりしなかった。
他にもそう。君はいろんなところに行きたがった。
僕はめんどくさい、とか何とか言ってあまり遊びにも連れてってあげなかった。
旅行なんて一度しかなかった。
君の誕生日。何かプレゼントあげたっけ?
何年か経ったら何も言わなくなったからそれでいいんだと思ってた。
雑誌のこのページ、丸がしてあった。
僕は女の人というものを知らないから、自分のものになった途端にほったらかしてしまうんだ。
そのことを君に言ったら、無理しなくてもいいよ、と言ったね。
ホントはそれも鵜呑みにしてはいけなかったのに。
そのとき僕は、君には気の利いたことを何も出来ないと思うけど、僕は君のこういう、こういう、
こういうところとか、こういうしぐさとか、こういう考え方とか、すごく好きなんだ、とも言った。
ありがとう、うれしいよ、と言ってくれた。
えー、もっと何かないの?とそのときの僕は言っていたけど、実はそれで十分だと気づいた。
君の存在そのものが消えてしまった。
そんな一言でさえももう聞けない。
どうしてそんなことになってしまった後に、一緒にどこかに行きたい、この靴を買ってあげたい、
食事をしたい、などと思うのだろう。
この雑誌、いつのだ?五年前か。意地でも探してやる。
おしゃれなレストランにも行こう。
あの旅行で行った海にも行こうよ。
たくさん写真も撮ろうよ。
そうやって毎日楽しく過ごして、素敵なおじいちゃんとおばあちゃんになろうよ。
それならそのとき君がいなくなっても、毎日を穏やかに過ごせるのに。
僕には君の記憶が少ないよ。想い出が欲しいよ。
悲しくなった。
これが愛することだと感じたから。
「長い後悔の旅に出る」
マスイジュウ 豊胸手術直前の作品である(2003)